会員の皆様へ
いつもアトリエをご利用いただきありがとうございます。
木曜、日曜クラスを担当している講師の小澤啓です。
都内を中心に再び感染者数が増加傾向にあり、昨年に続き、アトリエも 2 回目の休講となってしまいました。連日、逼迫した状況が報道されており、皆様も不安な毎日をお過ごしかと思います。
私はアート吉祥寺の他に、都内のアニメ制作会社や埼玉の専門学校にも勤めています。専門学校では、ゲーム会社就職(CG クリエイター)を目指す学生にデッサンを指導していますが、8 月中は回数を減らして授業が行われている状況です。最近は授業で配るテキストや作例を制作したり(写真がその一部です)、絵の資料探しや空き地の研究で撮影に出かけたりして過ごしています。
12 月にはアート吉祥寺展が予定されていますが、絵の資料に写真を使う方も多いと思います。その際、ネット上で見つけた写真や作品を参考にすることも良いですが(あくまで著作権の範囲内でですが)、自身で撮影やスケッチした資料を使うことにも大きなメリットがあります。
ここではそれについて3つほど取り上げたいと思います。
①物の構造や空間を把握できる。
写真を描き写していると、絵に大きな空間(奥行き感)が生まれなかったり、モチーフの立体感がうまく表現できないことがあります。理想としては、一度自分の目でモチーフを色々な角度から観察し、構造を理解した方が良いです。その際に記録として写真を撮ることをオススメします。こうすれば写真を見ながらでも、自分の目で見た印象を思い出すことができます。ただ、できれば 5 分でもいいのでスケッチしてみるとなお良いです。モチーフの構造や、風景であれば現地の距離を具体的に意識することができます。
②著作権を気にしなくて良い。
作品(写真や絵など)は、制作した人の死後 70 年間は著作権で保護されます。
著作権切れが確認できる作品か、自身で撮影した写真ならこれを気にせず利用できるのでオススメです。なお、著作権はプロ・アマの作品に関係なく発生します。有名な人の作品でなくても、利用したい時は確認するようにしましょう。
③見慣れた物や風景に、思いがけない魅力を発見できる。
自分で撮影やスケッチすることの1番のメリットは、物や風景の魅力を自身で発見できることにあると思います。
人物、動物、花などの主役になりやすいモチーフだけでなく、一見地味で主役にならなそうなものでも、切り取り方(構図)を工夫したり、観察を深めたりすることで魅力的な主役になります。私も、普段から良い風景や面白いものがないか撮影に出かけています。もちろん、撮影したものが全て絵に使えるとは限りませんが、資料集めや構図の練習の意味で習慣にしてみると良いと思います。下に紹介するのは私が散歩中に撮影した写真の例です。
例えば、雨の後の公園で水たまりの反射の様子を撮ったり、
住宅街と雲の組み合わせで絵になりそうな構図を考えたり..
ちょうど今の季節ではこういう面白い景色にも出会えたりします。
また、冬になれば枯れ枝の綺麗な形、影の面白い姿なども見られます。
もちろん、自然物だけでなく人工物にも魅力を発見できます。これはいつも通勤中のホームで目にする看板ですが、最近あらためてよく見てみると、その作り込みの複雑さに驚きました。
「鶴」のロゴをアップするとこんな感じです。複雑な迷路のように基盤が造型され、そこにニョロニョロとネオン管が通っています。
このように、普段目にするものの中にも、面白いものや魅力的なものはたくさんあります。
必ずしも絵の主役になるものばかりではないですが、実物を見ることで観察力が養われたり、日常の風景の見方が少しずつ変化していきます。このことが、ゆくゆくは描き手のオリジナリティにつながるのではないでしょうか。
制作のヒントとして、また、自粛生活中の楽しみ方の一つとしても参考にしていただければ幸いです。
アトリエが再開し、また皆様の作品が見られることを楽しみにしております。